茫然自失ストレート   02




ファミリーレストランでの羞恥プレイ事件(?)からやや数時間後。

只今、私・は、お妙さんと新八君の実家である恒道館道場へ来ている。
銀さん達万事屋メンバーと近藤さん、お妙さんも一緒だ。

各々、フンドシ仮面対策なのか、武装を施して屋敷の縁側の前に集合していた。


「いいかー、相手はパンツの量より娘の質を求めてる、真性の変態だ」
「……」


いつもの木刀を掲げ、ハチマキに防具まで身に付けた銀さんは、武装した近藤さんや薙刀をもったお妙さん、少し場違いな恰好(黄色いタイツスーツ)をしている神楽ちゃん、そして、呆れている新八君を前に、神妙な声で語り出す。

そんな中で私は―――何故か、銀さんに背後から抱き締められた状態で立たされていた(本当、何故だ)。


「だから、また必ずここに忍び込んでくる。そこを叩く」


ゴリゴリと頭の天辺に擦り付けられる銀さんの顎がすごく痛いが、今はそれどころではない。

何故……何故誰も、この状況にツッコんでくれないんですか……? (泣きたくなってきた)

そんな私の気持ちを分かってくれているらしいのは、苦笑している新八君だけである。
他の3人は何故か、「不本意だけどそこなら絶対安全だよ」みたいな顔付きで私を見ては、穏やかにニッコリと微笑んでいる。
こう言っては失礼かもしれないが―――今ほど、他人の顔面を全身全霊でブン殴りたいと思う瞬間はないだろう。

そんな私の気持ちを知らずに、ギュウッと後ろから私を抱き込んだままに、銀さんは続ける。


「フンドシ仮面だかパンティー仮面だか知らねーが、乙女の純情と男の誇りを踏みにじったその所業、許し難し―――白ブリーフを鮮血に染め上げてやるぞ!」
「「「オオォォ!!」」」


こうして、『下着泥棒』もとい『フンドシ仮面』退治が始まるわけなのだが、作戦は至って単純だった。
お妙さんのパンツを、これ見よがしに吊るしておくのだ。
それに引っかかったフンドシ仮面を、その場で現行犯逮捕、というわけらしいのだが―――。


「……大丈夫かな……」


私のそんな不安を余所に、フンドシ仮面襲来に備えて準備を始めるお妙さん達。
小さな呟きを聞き取ったのは、私の背後にひっついたままでいる銀さんだけだった。


「だーいじょーぶだって。ちゃんは何も心配することねェですよォー」
「……」


後ろから抱き付かれている私からは見えないが、声が明らかに笑っている。
きっと今までにないほど愉しげな表情を、銀さんは浮かべているに違いない。
それに、頭の天辺がいい加減凹みそうだ。


「……銀さん、皆準備してるみたいだから銀さんも準備してきなよ」
「俺ァもう準備万端、殺る気満々だよ」
「(殺る……?)じゃあ、とりあえず離れて。暑い。しかも、頭頂部が激しく痛い」


頭痛を感じ始める私を気にも留めずに、無遠慮に顎をゴリゴリと擦り付けてくる銀さん。
私は何だか今更になって恥ずかしくなってきて、私を抱き込む銀さんの腕の中でクルリと回って銀さんの顎を正面から掌で押し返した。
すると、銀さんは「いだだだだッ!」と声を漏らした後に、やっと私から離れてくれた。


「ちぇー、は冷てーんだからなァ……」
「冷たくて結構です」


舌打ちして子供みたいに唇を尖らせる銀さんを無視して、とりあえず縁側へと腰を下した私は、庭に散らばっている猛者達を観察することにした。

神楽ちゃん・お妙さん・近藤さんの3人は、妙にやる気満々だ。
目が半ば血走っているように見えなくもない。
そんな中、ただ茫然と立ち尽くす新八君。


ー!」
「―――! 神楽ちゃん……」


縁側に1人で腰掛けてボーッとしている私の目の前に、神楽ちゃんがテコテコと駆け寄ってきた。
その様はとても可愛らしくて笑みが零れるが、何分タイツスーツという異様な姿でいるその少女―――思わず、顔が引き攣った。


「どーしたの?」
「私今から瓦割りするから、に見てほしいアル」
「……へ、へー……瓦割りねェ……」


私の目の前で何故か瓦を何枚も何枚も重ね始める神楽ちゃん。

……年頃の少女が笑顔で言うことじゃないよ、神楽ちゃん。(お姉さん泣きそうだよ)

私が苦笑を浮かべたまま「何枚割るの?」と聞くと、神楽ちゃんは得意げに笑って「手始めに5枚ヨ」と言った。
何とも簡単に言ってのける子だ。
きっと素手で割るつもりなのだろうが、私だったら1枚たりとも割ることなど出来ない自信がある。


「わたァ!!」


そうこうしているうちに、神楽ちゃんの手刀によって瓦は無残にも粉々になってしまった。
神楽ちゃんは私をチラリと見て、「凄いね」と答えた私に嬉しそうに笑う(そして、新たに瓦を積み上げる)。

そんな神楽ちゃんの後ろでは、お妙さんがフンフンと鼻息荒く薙刀を奮っていた。
今にも誰かを突き刺しそうな勢いだ。

あれは……フンドシ仮面を殺しにいくつもりだな。

思わず、背中に冷たい汗が流れた。


「―――何ですか、コレ?」


そんな中、地面に屈んで何やら作業をしている様子の近藤さんに、新八君が話しかけているのが見えた。
それに首を傾げた私だが、何だか気になってそちらへ歩み寄って行くと、近藤さんの目の前には信じられない物が。


「地雷だ」
「こ、近藤さん……! なんて物持ち出してるんですか!?」


風呂敷の上に折り重なるように置かれたそれには、『百紅羅』という文字が刻まれていて。
近藤さんの口からサラリと出てきた単語に、思わず私は声を上げた。
そんな私に気付いた近藤さんは、傍に立つ私の顔を見上げてニコッと笑う。


「心配ない、ちゃん。これを庭一面に敷き詰めれば、こんなボロ屋敷も立派な要塞になるぞ」
「ボロ屋敷のままでいいわ!! アンタ戦争でもするつもりですかァ!」
「……いいのかな、地雷って」


最早、武器ではなく兵器だ。
きっと真選組局長としてのコネを遣って取り寄せてきたのだろう。
―――職権乱用である。


「新ちゃん、ここはもう戦場なのよ。遊び気分なら帰りなさい」


目に見えて当惑する新八君と、心の中で心配する私。
そんな時、薙刀を抱えて勇ましい目付きへと変わったお妙さんが不意に言った。


「姉上、ここが僕の帰る所なんですけど」
「戦場が帰る所とはよく言ったわ。それでこそ侍よ」
「いや……そーゆー意味じゃなくて」


最早弟のツッコミすら聞き入れられないらしいお妙さん。
もう止めることを諦めたのか、新八君は重々しい溜め息をついて肩を下す。
そんな新八君に、近藤さんは励ますように「一緒に姉上のパンツを死守しよう」と投げかけていた。


「―――それじゃ、地雷をしかけるとしよう。……ちゃんは危ないから端っこにいてね」
「そうよ。ちゃんが地雷を踏んで爆発なんてしちゃったら、私手駒を1人殺さなきゃならないもの」
「手駒って……近藤さんのことですか、お妙さん」


地雷を腕の中に抱えて、私に注意してきた近藤さん。
とりあえず庭の端にでもいようかと考えていると、お妙さんが笑顔でサラリと殺人発言をしたので、私は不安で仕方がなくなってしまった。


(近藤さんが地雷埋めるとこ、ちゃんと見てよう……)


自分が地雷の餌食になるのも、その後に近藤さんがお妙さんの餌食になるのも嫌なので、私は近藤さんの背を追うことに専念した。






そんなこんなで迎えた夜―――。

地面の上に座って、膝を抱えたまま空を見上げると、今日はとても星が綺麗なことに気が付く。
そんな星空をボーッと見上げる私の横で、夏の天敵である蚊に狙われたらしい銀さんが自分の頬を掌で打つ音がして、私は視線を空から外した。


「……ちょっと」


武装も準備運動も、はたまた地雷設置も済んだ今、私達は茂みの中で互いに身を寄せていた。
視線の先には皆一様に―――お妙さんのパンツ。
人の気配がする場所にフンドシ仮面が現れるわけがないと考えて、暑い中、身を小さくして茂みに隠れた私達だったが、不意に新八君が不満げな声を上げた。


「全然、泥棒来る気配ないんですけど」
「もうここに隠れて大分経つしねー」
「ホントだよ……。コレひょっとして今日来ないんじゃないんですか?」


蚊が飛び交うこの茂みの中に身を隠して、もうすでに1時間以上は経っているだろうか。
いつまで経ってもフンドシ仮面らしき人影は現れない。

流石にこの状況に飽きてきてしまったのか、今まで誰1人として口にしようとしなかった言葉を口にする新八君。
そんな新八君に、気の抜けた声が答える。


「大丈夫だよ、来るって」
「いや、だから。何を根拠に今日来るって言ってるんですか?」
「あんなこれ見よがしにパンツがぶら下がってるアル。下着泥棒がほっとくわけないヨ」
「いや、あからさますぎるよ! 何か罠丸出しだし」


確かに、新八君の言うとおりである。
1枚だけポツンと干されたパンツ―――あれでは明らかに怪しい。


「私も囮用の下着、提供した方が良かったのかな……?」
「いや、そーゆー問題でもないからね、ちゃん!?」
「そうよ、ちゃん! 大丈夫、私がちゃんの仇を取ってあげるわ」
「お妙さんのみならず、清純なちゃんのパンツにまで手を出すとは……絶対逮捕だッ!!」
は安心して待ってればいーネ」
「そうだぞ、。……これ以上どこぞの変態共にの神聖なパンツを与えてたまるか」
「神聖て……」


んな大袈裟な。

ちょっと冗談のつもりで言ったのに物凄く食いつかれたので、私は思わず押し黙る。
皆、顔が怖い。


「で、でも上手くいくかな?」
「そうだよね……僕もそれが心配だよ」


気温は幾分落ちただろうか。
しかし、むしむしとした熱気は相変わらずだ。

そんな空気に皆やられ始めたのか、いつの間にか私の横では取っ組み合いの喧嘩が始まっていた。
ギャーギャー騒ぎ始めたら止まらない。
こういう時に、無闇に止めに入ると巻き添えを食らうことを知っている私は、あえて仲裁には入らない。


「あーもう、止めて止めて。喧嘩しない!」


そこで、真選組で慣れているのか1人落ち着いている近藤さんが仲裁に入る(まあ、止まりはしないのだが)。


「暑いから皆イライラしてんだな。よし、ちょっと休憩。何か冷たいものでも買ってこよう」


近藤さんの制止の言葉は聞き入れないくせに、こういう言葉はちゃっかり聞いている一同。
「小豆アイス!」、「何かパフェ的なもの」、「ハーゲンダッツ」、「僕、お茶」と、各々自分の欲しいものを告げていくのを見て、私は苦笑した。


「ハイハイ。じゃ、買ってくるから大人しくしてなさいよ。ちゃんにも何か買ってくるよ」
「あ……はい。ありがとうございます」


まるで子供を宥めかす父親のような状態の近藤さんは、軽く手を上げて踵を返し、何気なく歩き出した。
それを見た私は、そこでふと、あることを思い出して慌てて立ち上がった。


「……ったく、しょーがない奴ら……」
「……あっ!! 近藤さん、待っ―――」




ドォンッ!!




「……」


買い出しへ出ようと近藤さんが足を踏み出した瞬間、けたたましい音と共に爆風が辺りを包んだ。
私は止められなかったことのショックで、思わず固まる。

カラン、と音を立てて、近藤さんの刀が落ちた。


「……アラ、近藤さんが爆発したわ」
「あー、暑かったからアルヨ」
「んなわけねーだろ。自分でしかけた地雷踏んだんだよ。馬鹿だね〜……―――、大丈夫かァ?」
「……う、うん……私は大丈夫、だけど……」

近藤さんが。

そう私が零す前に、誰かが「地雷をしかけた場所を誰か憶えているのか」と問う。
しばし沈黙が走ったところを見ると、誰も憶えていないのだろう(というか憶える気すらなかったのだろう)。
お妙さんの「新聞配達のオジサンが爆発するわ」というマジボケは、あえて無視する。

プスプスと煙を上げたまま倒れている近藤さん。
さほどそれを気にかけた様子もないメンバーが「身動きとれねーじゃねーか!」と口走っていた時だ。


「アハハハハハ! 滑稽だ! 滑稽だよ、お前ら!!」


「!!」
「あ……あいつは!?」


向かいに聳える屋敷の屋根に、怪しい人影。
中年らしき男が口元を褌で蔽い隠し、ブリーフ姿で堂々と、屋根の上で高笑っている。
それにしても。


―――滑稽なのはアンタだよッ!
いい歳してそんな格好で下着泥棒してる、アンタの方が滑稽だよ!


私はそのフンドシ仮面らしき人物を視界に捉えると、思わず心の中で呟いてしまった。
フンドシ仮面は私のそんな心の呟きを知る由もなく、「パンツのゴムに導かれ…」などと叫びながら、自分からフンドシ仮面だと名乗る。

大した義賊である。


「最悪だァァァ!! 最悪のタイミングで出てきやがったァァ!!」
「アッハッハッ。なんだか俺の為に色々用意してくれていたよーだが、無駄に終わったよーだな!」


私達が地雷のせいで身動きが取れないことをいいことに、フンドシ仮面は嘲笑うかのように私達を屋根から見降ろして言う。


「こんな子供騙しに俺が引っ掛かるとでも? 天下の義賊・フンドシ仮面も見くびられたものよ―――そこで指をくわえて見ているがいい。己のパンツが変態の手に渡る瞬間を!!」


あ、自分で変態って言ったよ。
言い切ったよ、あの人。

普通ならば緊迫するべき状況なのだろうが、敵の風体と言動にすっかり呆れきってしまった私。

そんな中、フンドシ仮面は愉快気に笑いながら器用に屋根を駆け降り、屋根の縁に手をついてクルリと身を翻した。
そして、今にも縁側へ着地しようとした―――が。




ドォンッ!!




「ぅわっ……!」


近藤さんの時と同じく、フンドシ仮面が足をついた瞬間、けたたましい爆発音と爆風が起きた。
思わず驚いて声を上げた私だったが、何故か他の4人はひどく冷静だ。
お妙さんと新八君は、家が壊れたことには何も感じないのだろうか。


「床の下にも、地雷をセットしてたんですね」
「そーみたいだな」


爆発によって起こった煙が晴れていくと、そこには当たり前のように地面へ横たわるフンドシ仮面の身体。
死んでいないことを祈りながらも、爆風に煽られてヒラヒラと舞うお妙さんの下着を何となしに見つめていた私。

しかし、そこで、しつこくもフンドシ仮面の腕が伸びてきて、それを掴み取ってしまった。


「―――フフフフ、甘いよ」
「!!」
「こんなものじゃ、俺は倒れない。全国の変態達が俺の帰りを待ってるんだ」


その変態の1人であるフンドシ仮面は、フラリと、薄汚れた身体を起こして立ち上がった。

そこまで女性のパンツに執着する意図が分からないが―――命をかけてまですることなのか?


「こんな所で負けるわけにはいかない。最後に笑うのは俺よ!!」


鋭い視線でこちらを見てそう言ってのけているが、いまいち格好ついていないように感じるのは私だけだろうか。

フンドシ仮面は勝機を見たのか、戦利品(お妙さんの下着)を手に握りしめたまま、その場を去ろうとした。
しかし、そんな時、不意にフンドシ仮面の足をガシリと掴む―――手。


「汚ねェ手でお妙さんのパンツ触るんじゃねェ!! 俺だって触ったことねーんだぞ、チクショー!!」


そこには、先程地雷で自爆したはずの近藤さん。
フンドシ仮面の足に抱きつくようにしてしがみつき、凄い剣幕で捲くし立てる。


「銀時ィィ、何やってんだ早くしろォ!! 今回はお前に譲ってやる!」
「うるせーな」
「!! ぎ、銀さ……」


近藤さんの叫びを聞いて、銀さんが腰にぶら下げた木刀に手を添える。
思わず私が呼び止めようとするが、銀さんの目がいつになく輝いて見えたので、言葉が続かない(輝いているというか、何だか怖い)。


「言われなくても行ってやるさ。しっかり掴んどけよ」


腰から抜いた木刀を構えて不敵な笑みを浮かべると、銀さんは真っ直ぐフンドシ仮面に向かって走り出した。
それを呆然と見送った私は、思わず顔を引き攣らせる。

や、ヤバい……。
銀さん、その先には―――。

そう私が思った瞬間、またしてもけたたましい爆発音。
もう、何が何やら分からなくなってしまったが、とりあえず銀さんが地雷を踏んで爆発したことだけは確かだ。


「あー……もうッ……!」


もくもくと立ち上る煙。
それを苛立たしげに手で払い、私は隣に立っているお妙さんと目を合わせる。


「お妙さん」
「ええ、分かってるわ、ちゃん」


互いにニッコリと微笑み、その場から走り出す。
煙でフンドシ仮面と近藤さんの姿は見えなかった。

お妙さんが、爆発して倒れかけている銀さんの背中を蹴って飛び上がるのを横目に見た私は、その倒された銀さんの手から木刀を素早く取り去る。
勿論、一言「ごめんね、借ります」と投げかけてから。


「―――!!」


そんな私達に呆気に取られた様子のフンドシ仮面に向かって、私は木刀を、お妙さんは薙刀を構えて。


「……女を」
「なめるんじゃねェェェェ!!」


そう漏らしながら、互いに互いの獲物を振るった。


「ぎゃああああ!!」


お妙さんの薙刀はフンドシ仮面の頭に直撃し、私が横凪に振るった木刀は、フンドシ仮面の素肌剥き出しの脇腹に見事命中。


「素顔も晒せない人に、私達のパンツはやれないわ」
「全くです」


出来れば全部返してほしい。

倒れたフンドシ仮面の手から離れたお妙さんの下着は、ヒラヒラと舞って持ち主の手の中に納まった。
何とか解決したらしいこの騒ぎだが、とんでもない被害である。


お妙さんが笑顔で黒いオーラを漂わせながらフンドシ仮面に説教する中、私は銀さんから拝借した木刀を肩に担いで、地雷被害者に歩み寄る。
近藤さんはお妙さんの傍で平気そうにしていたので、とりあえず銀さんの傍に。


「銀さーん、生きてますかー?」
「……ちゃん、どーして君は爆発しなかったの……」


したらしたで困るけど、なんて、か細い声で言う銀さん。
案外平気そうである。
私はそんな銀さんに苦笑して、口を開く。


「地雷がどこに埋まってるか、粗方憶えておいたんだよ。……無駄だったみたいだけど」
「おまっ……何でそれを、早く……言わねェんだよ……」
「いやァ、言いそびれちゃって……」


ごめんなさい、と銀さんに私が頭を下げた瞬間、背後から豪快な爆発音がまた響いて、私は顔を引き攣らせた。


「ほらみろ」
「…………すみませんでした」


後悔先に立たず、とはまさにこのことだな。

そんなことを思いながら、地雷被害を受けなかった私は1人、通報によって駆け付けてくれた真選組一同と共に、地雷除去作業に勤しむ羽目になるのだった。






「あ? オメーも盗られたのか、パンツ(あの野郎、後でぶった斬る……)」
「す、ストレートに訊かないで下さいよ、土方さん……っ!」
「へー、も盗られたんですかィ、パンツ……(斬り刻んで犬の餌にしてやらァ……)」
「そ、総悟君まで……」


私が地雷を取り除いている間に、いつの間にか復活した銀さん達がフンドシ仮面をボコボコにしていたのは、また別の話―――。








騒動は、闇と煙の中。

(大騒ぎしたのは私達)









アトガキ。


*女のプライドが齎した、珍事件の結末。

*ヒロインとお妙さんのタッグは、ある意味最強というお話でした。
 最後にチラリと真選組のお2人をゲスト出演させてみました。久々に逆ハーっぽく出来た……かな?
 きっとフンドシ仮面は絞られまくったことでしょう。……あ、でもこのあと脱獄するんだっけ?


*章タイトル『茫然自失ストレート』→→意:そのまま。ヒロインの、下着を盗まれた事実に対する気持ち。





*2010年11月1日 加筆修正・再UP。