DESTINY×ENCOUNTER 01
とある島の海岸から、一隻のキャラヴェル船が見える。
船首は、羊の頭を模していた。
なんともファンシーで可愛らしいその外見とは裏腹に、帆には麦わら帽子を被った、“信念”を象徴するドクロマークが大きく描かれている。
そして、メインマストの上ではためく―――海賊旗(ジョリーロジャー)。
“麦わらのルフィ”率いる麦わら海賊団の次なる目的地は、春島“ルーチェ島”であった。
ルーチェ島は、海軍基地を中心に街が広がり、円状に多くの店が建ち並び、更にその周りを雄大な自然に覆われている。
物資盛んで自然にも愛された、“偉大なる航路(グランドライン)”の中にある島でも稀に見る、平穏で落ち着きのある島だ。
今回、麦わら海賊団の愛船・ゴーイングメリー号は、我らが船長の爆裂的な食欲によって底を尽いてしまった食料を求め、海軍基地がある島にも関わらず、仕方のない停船を余儀なくされてしまっていた。
「うっひょー!! キレイな島だなー!」
海岸の岩陰にゴーイングメリー号を隠すように停船させた麦わら海賊団一行は、早々とその地に降り立った。
そして、真っ先に船から飛び降りてそう叫んだのは、麦わら海賊団船長で麦わら帽子がトレードマークの少年―――モンキー・D・ルフィだった。
『海の秘宝』とまで呼ばれる“悪魔の実シリーズ”の1つ、ゴムゴムの実を食べたゴム人間である。
好奇心旺盛なルフィは、またしても何かが待ち受けるだろう未知の土地を見渡し、心躍らせていた。
「おい、ウソップ! チョッパー! 早く降りて来いよ!」
「わーってるっての! そう慌てんなって…」
「街が森に囲まれてるのか……すげーっ!」
そんなルフィに続いて島に降り立ったのは、狙撃の腕はピカイチだが嘘付きなのがたまにきずな、長い鼻が特徴的な少年―――ウソップ。
そして、麦わら海賊団の有能な船医を務める、喋る小さなトナカイ―――トニートニー・チョッパーだった。
チョッパーはルフィと同じく悪魔の実の能力者で、ヒトヒトの実を食べた人間トナカイだ。
船から降り、地面に足をつけたウソップとチョッパーは、呆然とその場に立ち尽くして口をあんぐりと開けたまま、目の前の荘厳な島を見渡した。
「すっげー……なあ、ウソップ! またこれから冒険が始まるのか!?」
「お、おうともよ! 見てろよ、チョッパー。このキャプテーン・ウソップ様の勇敢なる―――」
「馬鹿言ってねェで、さっさと行くぞ」
「いでっ!」
今にも自分の勇姿を語り出しそうだったウソップを遮って、その頭を小突いたのは、3本の刀を使いこなし、“海賊狩り”の異名を持つ青年―――ロロノア・ゾロ。
腰にはいつものように、『和道一文字』、『三代鬼徹』、『雪走』といった名高い刀が3本添えられている。
「ボーッとしてっと置いてくぞ」
そう言ってスタスタとウソップ達を追い越して歩いていくゾロの後ろから、また青年が1人、ウソップ達の横で立ち止まり、先行くルフィを見て笑う。
「腹減ってるわりにゃクソ元気じゃねェか、アイツ…」
「サンジー! 早く飯ー!!」
「食材買わなきゃねェっつってんだろ!」
全部てめぇの胃の中だろうが、とルフィを怒鳴りつけるのは、一味のコックを務める足技師―――サンジ。
呆れたような溜息と共に吐き出された紫煙は、ゆっくりと空気に消えていった。
「ったく! あんな大はしゃぎして……海軍にでも見つかったらどーすんのよっ!」
そんな船員達を、船の上から呆れた表情で眺めていたのは、航海士を務める海賊専門の泥棒―――ナミだった。
そこら中を走り回りながら奇声を発しているルフィや、それに便乗してあっちへ行ったりこっちへ行ったりして騒ぎ立てているウソップとチョッパーを見て、ナミは痛む頭を押さえる。
毎度のことながら、あまりの危機感の無さに呆れ果ててしまう。
「……航海士さん、早く降りないと、皆勝手に街へ入っちゃうわよ?」
「え? ……ああッ! アイツら…!」
そう言ってナミの隣で楽しげに笑っている女性は、麦わら海賊団クルーの中でも1番の新顔で、3人目の“悪魔の実”の能力者―――ニコ・ロビンだ。
ハナハナの実の能力者で、体の一部を花のように咲かせる能力を持ち、優れた頭脳を持つ考古学者もあり、ナミが唯一頼ることのできる人物である。
「とりあえず、私達も降りましょう?」
「そうね。―――ルフィ!そこでジッとしてなさいよー!!」
慌しいながらに、いつもの調子で島へ上陸した一行は、騒がしいルフィを先頭にして街へと足を進めた。
鬱蒼と茂った豊かな森を抜けると、島の中心部である海軍基地を囲む街―――“デセオガーデンズ”に出た。
そこには、様々な形や高さの店や住宅が、円状にズラリと立ち並んでいる。
思わずその場に立ち止まって辺りを見渡すと、右を見れば衣服屋、左を見れば武器屋、目の前を見れば海軍基地という、なんとも忙しい光景が視界に広がった。
そんな、変わった立ち並びの街を見渡して真っ先に瞳を輝かせたのは、やはりルフィ達年少3人だった。
「うはー! 面白ェ街だなァー!!」
「円形の通りなんて珍しいなー」
「あれが海軍基地なのかっ……でかいなァ!」
三者三様に言葉を零しながら、ルフィ・ウソップ・チョッパーの3人は、仲良く顔を寄せ合って忙しなく街を見渡す。
「この大通りは“エンロード”と呼ばれているらしいわ」
「へー……街の名物みたいなもんか」
今まで航海をしてきて訪れた様々な島の中でも類を見ない、広大で変わったその光景に、一行は新鮮な気持ちを感じていた。
「気候にも環境にも恵まれた、いい島ね。この“偉大なる航路”の中に、まだこんな島があるなんて…」
「それなりに有名な島なのよ? 『時代知らずの島』ってね」
街の様子を目の当たりにしながら、少し唖然として言うナミに、ロビンがニッコリと微笑んで言った。
それを見て「さすが博識だなァ、ロビンちゅわん!」と身体をくねらせているサンジは、とりあえず無視しておこう。
この、強豪蠢く大海賊時代、海軍基地があるとはいえ、海賊の被害を受けることなく、平穏な生活を全うしている島はそうそうない。
―――まして、ここは『海賊の墓場』とまで称される“偉大なる航路”である。
「『時代知らずの島』、ねぇ…。海軍の守りが堅いのか?」
「……その割にゃ、見張りも何もなかったじゃねェか。この海軍基地、見掛け倒しなんじゃねェのか?」
目の前の海軍基地を見上げてそう漏らすサンジに、ゾロは小馬鹿にしたようにニヤリと笑って海軍基地を指差し、言った。
一行の視線も、自然と、天に向かって聳え立つ海軍基地へと向けられる。
「まあ、確かにな。いくら隠れて入航したっつっても、海兵1人見当たらないとは…」
「何かとんでもねェ怪物がこの島の主で、そいつがこの島を守ってるんじゃねェの?」
「ぇえっ!? 怪物がいるのか!?」
ウソップのふざけた物言いに、チョッパーだけが素直に反応してみせた。
ウソップとチョッパーがじゃれ合っているのを、横目に見ながらナミが溜息をつく。
確かに、絶対に有り得ないとは言い切れない話ではあるが、そんな怪物がいる島がここまで人で賑うものだろうか。
入航した時、怪物どころか海兵1人の姿も見なかった状況を考えると、ウソップの妄想が現実である可能性は、極めて低い。
ふと、その時。
ぐぅーっ、という奇妙な音が辺りに響き、一行の耳へはっきりと届いてきた。
音の主は、言わずと知れたこの人物。
「んなこたいいからよォー、腹へったァ……飯屋ァ……」
へにょっ、と身体を前のめりにだらしなく構え、覇気のない声色でルフィが言うと、他のクルーは互いに顔を見合わせて苦笑した。
食料が尽きてしまったこともあり、昨晩からまともな食事を取っていないせいか、全員腹の中がスカスカではある。
チョッパーに至っては、ルフィに便乗して腹を鳴らし、ルフィと共に、へにょっ、と寄り添っている。
「レストランでも探した方がいいんじゃないかしら? ね、コックさん」
「任せて、ロビンちゃん! ナミさんとロビンちゃんの為に、とびっきりいい店を見つけましょうっ! ―――よし、飯屋探すぞ。ルフィ、チョッパー」
「「おうっ!」」
ルフィとチョッパーを見兼ねたロビンの一言から、一行はまず腹ごしらえをしようと、円状の大通り―――エンロードを歩き始めた。
活気溢れる市場や店先からは、あちらこちら客引きする声が木霊して、街の賑やかさを際立たせていた。
一行は、そんな店並びを興味深そうに見て歩く。
「―――ん? なあ、おい、あれ…」
街中を喜々として眺めていた時、他の店よりも頭の高い建物が1つ、一行の視界へ飛び込んできた。
しっかりとした佇まいではある建物だが、少し時代を感じる。
人が使用しているような痕跡がないことから、きっと廃屋となっているのだろう。
その廃屋の側で、何やら街の人々が塊をなしているのを、ウソップは見つけ、指で示した。
「何だ何だ? 喰い物か?」
「何でだよッ!」
「お前にはそういう思考しかねェのかよ…」
自分の指した先を見て嬉しそうに涎を垂らして言うルフィに、すかさずウソップが突っ込んだ。
サンジはただ呆れて、横目に我らが船長を窺って言う。
ゾロやナミに至っては、慣れてしまっているのか諦めてしまっているのか、完全に無視である。
「すごい人だかりね」
「何か見世物でもやってるんじゃない?」
とりあえず、歩みを進めて、ゆっくりとその群衆へと近づいていくと、どうやら群衆は皆、頭の高い廃屋の天辺を見上げているらしい。
「……?」
「な、何かあったのかな…」
ざわめく群衆は、ひそひそと不安げに言葉を漏らしながら、それぞれ複雑な表情を浮かべて廃屋の屋上を見上げていた。
「―――おい、の奴、大丈夫なのか? あんな高いとこ登っちまって…」
「海軍の奴ら、今日はやけにしつこいみたいだったからな。人数もいつもの倍はいたぞ」
「あんなところまで追い詰められて…。ちゃん、怪我とかしなければいいけど…」
群衆の会話に耳を傾けてみると、どうやら海軍がこの廃屋の天辺にいるらしい。
しかも、『』という人物を執拗に追い掛け回して。
「海軍が上にいんのか…」
「そうみたいね。……ロビン、何か見える?」
「やってみるわ」
群衆が道を遮ってしまっているため先に進めなくなってしまった一行は、仕方なしにその場で足を止める。
ナミが廃屋を見上げて言うが早いか、ロビンは頷いてゆっくりと瞼を閉じた。
―――ハナハナの実の能力で、廃屋の上で何が起こっているのか確認しようというのだ。
「……―――見えたわ」
「!」
「海兵が10人…いえ、20人はいるかしら。あと……女の子が1人いるわ」
「女の子!?」
『女』という単語に真っ先に反応を示したサンジを無視して、ロビンは冷静に続ける。
「女の子1人相手には異常な光景ね。女の子は特におかしな様子はないけれど―――」
「……どーした?ロビン」
ふと、ロビンが一度言葉を切った。
不思議に思ったルフィが横からロビンの顔を覗き込み、廃屋と交互に見やった。
すると、ロビンはゆっくりと閉じていた瞼を押し上げて、少し困ったように笑う。
「多分、あの子―――飛び降りるつもりね」
ロビンがゆっくりとそう漏らした瞬間、群衆のざわめきがドッと大きくなった。
悲鳴と叫び声の混ざり合ったそれに、一行は驚いて群集に目を向け、その視線の先を追う。
視線の先には―――廃屋の天辺から落ちてくる、小さな人影。
「なッ……!?」
「おい!マジで落ちてきてるぞ!!」
突然の出来事に、常に沈着冷静なロビン以外のクルーは、口をあんぐりと開けて叫んだ。
それもそのはず。
廃屋の高さはかなりのもので、下で受け止めようにも落ちてくる距離があり過ぎて、常人にはとてもじゃないが無理だ。
第一、落ちてくる人物のみならず受け止めようとした者まで巻き込まれて、その衝撃で死にかねない高さだ。
幸い、人影の落ちてくる下には人はいないが、このままでは落ちてくる人物はひとたまりもない。
「ど、どーすんだよ!?」
当然、群衆は唖然としてその落ちてくる人物を見上げているだけで、誰も動こうとはしていない。
廃屋の上では、海兵達が下を覗き込んで何やら慌しい様子で叫んでいた。
「―――! ……ッ、ルフィ!!」
「……んぁ?」
そんな、その場に居合わせる誰もが驚きで動きを止めている状況の中、真っ先に我に返ったのはナミだった。
ナミは何か思い立ったように目を見開くと、右隣で呆然としているルフィの背中をバシバシと掌で叩く。
「いでででででッ! な、何だよ、ナミ!?」
「あの子! あの子助けんのよ、早く! アンタなら腕伸ばして助けられるでしょ!!」
「そうか! その手があった!」
「船長さんの身体なら、受け止めても大丈夫そうだものね」
ナミの指差す先を見上げて、ウソップもナミの言葉に賛同した。
ロビンが言うように、ゴムの身体ならばあの高さから落ちて勢いのついた人間を、衝撃に耐えて受け止められるかもしれない。
「急げ、ルフィ!!」
「おう! 任せろッ!!」
慌しくサンジに背を押されて、人影が落ちるだろう場所に向かって走り出したルフィ。
しかし、いくら身軽で素早いルフィでも、その場所までは到底間に合いそうになかった。
「くそッ……!!」
ルフィは考える間もなく、その場に立ち止まって足を踏ん張ると、腕を力いっぱい伸ばし、人影に向かって投げ縄のように投げつけ―――腕を巻きつけるようにして、人影を捉えた。
「掴んだ!!」
「やったァ!! ルフィ!」
それを見たウソップとチョッパーは、嬉々とした表情でルフィに叫んだ。
群衆は、何が起こったのか理解できない様子で、ただ口をあんぐりと開けている。
すると、ルフィはグッと地面を力強く踏みしめると、ニィッ、と笑って一行を振り返ってきた。
何事かと一行が首を傾げると、目の合ったゾロとサンジに向かって言う。
「ゾロ!! サンジ!!」
「「ぁあ?」」
「俺の後ろ、押さえといてくれ!」
グイッ、と。
ルフィが自身の腕を元の長さへと戻し始める。
「はあ? お前、何言って…―――」
「ま、まさか、ルフィ……おまッ……!」
怪訝そうなサンジと何かを察した様子のゾロの言葉を無視して、ゴムの反動で勢いのついたルフィの腕は、人影を巻き付けたままこちらに向かってくる。
―――どうやら、ルフィはそのまま受け止める気らしい。
ゾロとサンジは慌ててルフィの背後に駆け寄り、目の前の背を2人で押さえた。
「―――ぅひやあああぁぁぁぁ!!?」
女の、何とも間の抜けた悲鳴が辺りに木霊してルフィ達の元に近づいてきたかと思うと、ルフィ・ゾロ・サンジの3人が、鈍い音と共に群衆の先へと吹き飛んでいった。
「……あら、随分飛んで行っちゃったわね」
「落ち着いてる場合かァ!!」
「ゾロぉー!! サンジぃー!! ルフィー!!」
やはり、1人だけ冷静なロビン。
そんなロビンに突っ込んだウソップは、姿を消した3人の名を必死に叫ぶチョッパーと共に、慌てて3人が吹き飛んでいった先へと駆け出した。
「「……」」
「あー! ビックリしたー…」
「―――ルフィ、大丈夫か!?」
駆け寄ってみると、そこには、建物の分厚い壁に叩きつけられ、背中がめり込んだまま隣り合わせに白目を剥いているゾロとサンジ、そして、小柄な人間1人をしっかりと腕の中に抱き込んで1人ヘラヘラとしているルフィの姿があった。
「おう、ウソップ! チョッパー!俺ァ全然平気だ」
「そうか…。ぜ、全員無事みたいだな。よかったー…」
「「よかねェッ!!」」
「うひーッ!?」
ウソップが、ふー、とよく分からない安堵の溜息をつくと、先程まで白目を剥いて壁にめり込んでいたゾロとサンジが勢いよく壁から剥がれて、歯を剥き出しにして怒鳴った。
「大丈夫? 3人とも」
「ナミさぁぁん! ロビンちゅわぁぁん!! 見てくれよ、この傷ぅ!」
「あー、はいはい。あの衝撃をそんな擦り傷程度で受け止められるアンタ達はすごいわよ…」
2人に怒鳴られて怯えるウソップとチョッパーの後に続くように、ナミとロビンも駆け寄ってきた。
ナミとロビンに、これでもかと大袈裟に身体をくねらせて猫撫で声を出しながら、自分の手の甲につく擦り傷を見せるサンジに、ナミはただ呆れるばかりだ。
そんな中、チョッパーは1人、ルフィに抱えられている人物に近づいていった。
助けたのはいいが、怪我でもしていては大変だ。
早急に、医者である自分が診て、必要ならば手当てしなければならない。
そんなチョッパーに気付いたナミは、少女を抱きこむルフィに言う。
「ルフィ、腕放して! チョッパーが診てあげられないでしょ」
「え? ……ああ、悪ィ悪ィ」
ナミに頭を叩かれたルフィは、すぐに抱え込んでいた腕を開いて、腕の中の人物を解放した。
ずっとルフィがきつく抱き込んでいたおかげか、目立った外傷は見当たらないが、どうやらあまりに突然の出来事に気を失ってしまったらしい。
ぐったりとルフィの身体にもたれかかったまま、動かない。
「ったく、何だってんだ一体…」
「そりゃあこっちの台詞だぜ」
ゾロとサンジは何とか身体を動かして、互いに睨み合いながら歩み寄ってくる。
そんな2人のしっかりした足取りを見て、「心配して損した」と思うナミ。
「あんなところから飛び降りるなんて、どんな奴だ?」
「さあねェ。海軍に迫られて仕方なく飛び降りたみたいだけど、その時点で普通じゃないことだけは確かね。……チョッパー、どう?」
「うん、腕とか身体には怪我はないみたいだけど…」
呆れながら言うウソップに応えながら、ナミはチョッパーを見た。
チョッパーは懸命に、その人物の腕や身体を調べている。
「どんな子かしらね? 海軍に追われている子なんて」
「あれ、ロビンちゃんは見たんじゃなかったのかい?」
「顔は見えなかったの。女の子っていうのも、何となく背格好で、ね」
そう言ってニッコリ微笑むロビンも、他のクルー達と同じようにその人物へ歩み寄る。
そして、ルフィの腕の中にいる人物を、全員で覗き込んだ。
ゆとりのあるジーンズに、スカートのように腰に幾重にも巻かれた数枚のストール。
上は数枚重ね着されていて随分と厚着ではあるが、華奢な身体つきがよく分かるため、ロビンのいう『女』というのは本当だろう。
「よいしょっと」
そして、チョッパーがその人物の俯いている顔に手を添え、クイッと自分の見える位置へ顎を上げる。
クルーの視線が自然とそちらに向くと、そこには―――。
「……あ。ロビンの言う通り、女の子だっ!」
ナミより少し短いと思われるくらいの長さの、不揃いで、ゆるく自然なウェーブのかかった銀糸の髪を乱し。
整った、まだあどけなさの少し残った顔立ちで。
弧を描く睫が縁取る双眸を伏せた―――少女がいた。
そんな少女を見て思わず茫然とし、珍しくルフィやロビンまでもが言葉を失っている中に、チョッパーの明るく可愛らしい声が響いた。
変わり始める。
(それは、未知への旅立ちの準備)
アトガキ。
*衝撃的且つ意外性満点な、新たな出会い。
*ルフィに捕まったのは、紛れもなくヒロインです。本編登場一発目が、絶叫です(笑)
ちなみに、ヒロインは死ぬつもりで建物から飛び降りたわけではありません。(あたり前じゃ)
*2010/01/02 加筆修正・再UP。
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