DESTINY×ENCOUNTER   03




「―――なあ、この子どーするんだ?」


茫然としていた麦わら海賊団一行を現実へと引き戻したのは、他ならぬチョッパーの一声だった。


アラバスタ王国での一件も解決し、ニコ・ロビンを仲間に加え、幾つ目かの新たな島へとやってきた麦わら海賊団一行。
そんな一行が、上陸した島“ルーチェ島”のデセオガーデンズという街で遭遇したのは、海軍に追われて廃屋の屋上から飛び降りてきた―――銀糸の髪を持つ少女だった。

少女と地面が接触する間際、かろうじて、ナミが機転を利かせて、ゴム人間であるルフィの腕が少女を救ったことから、事は始まった。


その、何とも数奇な少女との突然の出逢いに、一行はただただ呆気に取られてしまっていたのだ。


「……んッ…」
「!!」


一行が我に返った矢先、不意に少女がルフィの腕の中で身を捩り始めた。
整った眉を寄せ、どこか辛そうに顔を歪ませる。

その場にいる者全員が、思わず息を呑む。


「―――……ッ、あ、れ…?」


少女は薄らと瞬きを数回繰り返すと、ゆっくりと上体を起こして俯いた。
衝撃が強かったのか、華奢な手で首から肩にかけて、優しく撫でつけている。


その手は何故か、真っ白な包帯に包まれていた。


一行は動く少女の顔を見ようと、互いに少しずつ寄り添って少女を囲むようにして見下ろす。


「……?」


ふと、少女は自分の周りにある気配と、自分に覆いかかる影に気付き、ゆっくりと顔を上げ始めた。
そこには―――。


「大丈夫か? お前」
「……」


自分の体を抱えるように支えるルフィの、顔。
どうやら、少女に興味を惹かれてしまったらしいルフィは、相手の顔色などお構いなしに、顔を少女にグッと近付け、笑った。

それはもう、鼻の頭が今にもくっつきそうな程に。


「しっかしお前軽いなァ。ちゃんと飯食ってんのか?」
「…………ッ!!?」


暫くルフィの顔を間近で見つめたまま呆気にとられてしまっていた少女だったが、目を真ん丸く見開き、突然我に返ったように顔を微かに紅く染めて、器用にルフィから離れるように後退した。
ルフィも他のクルー達も、思わぬ少女の動きに驚き、少女を見る。


「ご、ごごご、ごめんなさいッ!」


計り知れない動揺を言葉に表しながら顔を紅くして言う少女。
そんな少女の容姿は、やはり人のそれとはかけ離れたような、神秘的な雰囲気を醸し出していた。

銀糸の、不揃いに切られた、自然な程度にフワフワとした髪。
小柄で、まだ若さが残ったような感じではあるが、どこか落ち着いた、大人びた雰囲気も感じる。




そして、何より―――開いた双眸の先に見えた、白銀。




「えっと、貴方……達は、どちら様で…?」


何とか動揺する気持ちを抑え込んで落ち着きを取り戻し始めたらしい少女は、少し訝しげにルフィ達を見渡し、今更訊ねてきた。
そんな少女に、ルフィは嬉しそうに笑う。


「俺か? 俺は―――」
「ああっ! 輝かしき白銀(しろがね)の、可愛らしいお嬢さん!」
「……へ?」


少女の問いにルフィが答えようとしたのを突然遮ったのは、自称“プリンス”の女好き・サンジだった。
ルフィと少女との間に身体を割り込ませ、地面に座り込んでいる少女の前で膝をついてその手を握るサンジを見て、クルー達は「始まった…」と溜め息をつく。


「僕は今までの長い年月を呪い、今日という日に感謝します。君のような運命の人に巡り逢えるなんて!」
「あ……えっと、どうも…?」


両目をハートにして迫ってくる目の前の男に、少女は少し場違いな、気の抜けた声を出して答える。
そして、サンジの背後で、ルフィはそんな2人を見てどこか不機嫌そうに口を尖らせていた。


「銀色のお嬢さん、僕にお名前を―――」



ドスッ。



「ぶほっ!?」


クルー達が呆れ返っている間に、本格的に口説きに入ったサンジが少女に訊ねようとした瞬間、鈍い音とともに妙な悲鳴を上げて、サンジがその場に崩れ落ちた。
その突然の出来事に、少女はただ目を丸くする。


「あ、あの……大丈夫ですか?」


少女が、何やら脇腹を抱えてもんどり打っているサンジに声をかけた時、不意に少女の視界に真っ白な鞘―――ゾロの愛刀が写った。
どうやら、ゾロが自分の刀でサンジの脇腹をド突いたらしい。

少女が驚いていると、サンジもそれに気がついたらしく、勢いよくその場で立ち上がると、これでもかとゾロに顔を近付けて睨みつける。


「ってめぇ……何しやがんだ、クソマリモ!!」
「くどくどくどくど、うるっせェんだよ。てめぇが油断してんのが悪ィんだろーが、エロコック。馬鹿じゃねーのか?」
「んだとコラ! レディーに手を差し伸べて何が悪い!」
「エスコートするつもりだってんなら、もっと場所を弁えろ、アホが。てめぇのはただのナンパじゃねーか」
「ろくにエスコートもできねェ筋肉バカに言われたかねェんだよ!」
「あんだと……? やんのか、コラァ!!」


茫然とする少女を無視して、ゾロとサンジの喧嘩はヒートアップしていく。
そんなゾロとサンジを見かねて、ナミがいつものように仲裁に入った。


「うるさいわよ、ゾロ、サンジ君! 今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!?」


今にも、ゾロは刀で斬りかかり、サンジは得意の足技で蹴りかかろうとしていたところを止められ、2人は我に返ってナミを見た。


「でも、ナミさん、こいつがぁ…」
「でもじゃない! 場所考えて喧嘩してくれる? その娘も困ってるじゃない」


ナミのその一言に、2人のみならず他のクルー達と少女も、辺りを見渡した。

そう言えば、ここは街の大通りのど真ん中だったのだ。
自分達の周りには、大きく円を描くようにたむろする、民衆の姿。


「あらら…」
「……チッ」


そう困ったようにサンジが声を漏らし、ゾロが舌打ちをした時、それまで茫然と喧噪を見守っていた少女が、不意に思い出したかのように口を開いた。


「か、海軍は……? 私、海軍から逃げてて……」
「海軍なら、もうそろそろここに来るんじゃないかしら?」


そう言って、辺りを見渡す少女。
そんな少女に少し腑に落ちないものを感じながらも、ロビンが優しく少女に言った。
それを聞いた少女は、慌ててその場に立ち上がると、乱暴に服についた埃を払い落して一行に向き直る。


「あの……助けてくれてありがとう」
「いいィよ、別に」
「助けてもらってアレなんだけど、貴方達も早く逃げないと―――」


ニカッと笑うルフィに少女がそう言いかけた時、ドタドタと慌ただしい音とともに現れたのは。


ーーー!!」

「! ……あーあ」


先程から少女を追いかけ回しているだろう海兵達の姿。
怒りで顔を真っ赤にさせた上官海兵が、20名ほどの部下を引き連れて、こちらに向かってきている。

少女はそれを見ると、呆れたように声を漏らし、小さく舌を打った。


「や、ヤベェ! こっち来たぞ!?」
「あーもうっ! 次から次へとォ!! このままじゃ私達のことがバレるのも時間の問題じゃない!」


海軍が迫ってきて、慌て始めたのは少女だけではなかった。
ウソップは1人、目を飛び出させてアワアワし始める。
ナミに至っては立て続けに起こる出来事に、イライラして頭を抱えていた。


「バレたらまずいのか?」
「捕まっちゃうわね」
「えぇ!?」


現状を把握しきれていなかったチョッパーは、ロビンの冷静且つサラリとした言葉に、ウソップと一緒になって騒ぎ出す始末だ。


「チッ、めんどくせーな……」
「何だよ。全員ぶっ飛ばしゃいいじゃねーか」
「やめとけ、ルフィ。こんな人通りの多い場所じゃ下手に暴れられねェだろーが」


呆れたように舌を打ったゾロは、心底面倒くさそうに顔を歪めた。
各々どうしようかと思考する中、さすがの船長・ルフィは1人、肩に手を添えて戦闘態勢に入ったが、サンジに止まられてあえなく断念する。

そんな一行の様子をジッと眺めていた少女は、何を思ったのか、一行と、こちらへ向かってくる海兵達との間に立ち、海兵達をジッと見つめた。
そんな少女に麦わら海賊団一行も気付き、不思議そうに目を向ける。


「私が何とかします。皆さんに、迷惑かけるわけにいかないし……逃げて下さい」


一行に顔を向けずに、白銀の瞳で真っ直ぐ海兵達を睨みながら言う少女。

普通ならばその言葉に甘えるところなのだが、自分達だけではなく彼女も海軍から逃げている身だ。

第一、あの海兵達の目的は―――少女。
どんな理由で少女が追われているのかは定かではない。
しかし、どうみても彼女は悪人には見えなかった。

クルー達はルフィをはじめ、それぞれ顔を見合せてコクリと頷いた。
海兵はすぐそこまで迫ってきている。


「貴方達も海軍が嫌いみたいだし……早く」


少女を見ると、何やら両手に巻かれた包帯を解こうとしているらしい。


「よし! 行くぞ、皆」


ルフィがそう言って、笑った瞬間。




「―――……えっ?」




ヒョイッ、と。
ゾロが、まるで赤子でも抱え上げるかのように容易く、少女を肩に担ぎ上げた。
少女があまりのことに茫然として言葉を失っている間に、ゾロは少女を担いだままその場から走り出した。


「待て、貴様ら!! どういうつもりだァ!!?」


もちろん、驚いたのは少女だけではなく。
やっと追いついたと息せき切っていた海兵が、一行の後ろから大声で叫んでいた。
どうやら、一行が海賊であることには、まだ気付いていないらしい。


「……ちょ、お、下してッ……! 貴方達を巻き込むわけには―――」
「うるせぇ!! 耳元で騒ぐんじゃねぇよ!」
「ぅ、えぇ!? で、でも……」
「いいから暴れんな! 落とすぞ!」


しばし呆然としていた少女は、はっと我に返ってゾロに言う。
しかし、腰をがっしりと抑え込んでいるゾロの腕はびくともせず、おまけに恐ろしい人相と声で怒鳴られ、あえなく少女はその場に収まることとなった。


「ねえ、船長さん。逃げるのは構わないんだけど……」
「ん? 何だよ、ロビン」


少女を抱えたゾロを後ろにエンロードをひたすら走り抜けていく中、ロビンが不意に口を開いた。
逃げ足の早いウソップと普段の人獣型からトナカイの姿になって走るチョッパーが先頭で、その後ろを楽しげに走っていたルフィは、左隣を走るロビンを見る。


「この通りは海軍基地を中心に円状になっているようだし、このまま道に沿って走っていても埒が明かないと思うわ」
「おー……そうなのか?」
「はあー……やっぱ馬鹿だな、ルフィは!」


ロビンの言葉を全く理解できていないらしいルフィ。
そんなルフィに呆れたように溜息をついて、ウソップが割り込んできた。
ルフィは不愉快そうに「失敬だな!」と怒るが、ウソップはそれを無視。


「いいか、ルフィ。ドーナッツってあるだろ? あれは真ん中が穴空いてっけど…あれみたいな島なんだよ、ここは」
「何ィ!! ドーナッツなのか、この島!!」
「違うわッ! ンなわけあるかァ!! 話聞けェ!! ……いいか? 真ん丸くなってるこの道を走ってても、結局同じ場所をぐるぐる回るだけなんだよ。だから―――」
「この道から外側に出ていかないと、逃げ切れたことにならないってことよ」
「あー、なるほど。そういうことか」


ウソップのよく分からない喩えとナミのフォローで、やっと理解できた様子のルフィ。

この島は、海軍基地が中心となっている。
その外側には、商店や住宅が軒を連ねる“エンロード”。
そして、その外側には欝蒼と茂った森林―――。

海軍基地のある内側には、もちろん逃げることはできない。
かといって、ずっと円状になっている道をグルグルと走り抜けるわけにもいかないので、否応なしに外側の森に逃げ込むしかないのだ。

理解力の乏しいルフィに少し疲れを感じながらも、ナミがそのまま続ける。


「外に出たいのは山々だけど……私達もここ初めてだし、ややこしい路地に入ったら逆に捕まっちゃうかもしれない」


外側の森に出る為には、はじめに自分達が入ってきた入口に戻らなければならないが、その入口は現在いる場所からほぼ真逆に位置している。
その為、エンロードを抜ける他の方法は、入り組んだ細い路地を行くしかないのだが、ややこしい分勝手が分らず、自ら海兵達に追い詰められに行く可能性がある。


「―――あ、あの!」


一行が各々思案していた時、不意に少女が声を上げた。
一行の視線は自然と、ゾロに担がれている少女へと向く。


「そこの、屋根が緑のと、オレンジの建物の間の路地に入って!」
「え? ……あっ、あそこか?」


少女がそう言って指差した先を確認すると、先頭を走るチョッパーが言った。

少女がコクリと頷いたのを確認すると、一行はその緑色の屋根の建物とオレンジ色の屋根の建物の間に、するりと滑り込んだ。
路地は思っていたよりも狭かったが、少女の案内で難なく先へと進んでいく。


「そうよね。初めからその子に聞けばよかったのよ…」
「よく考えりゃ分かったことだよな…」
「いいじゃねェか、ナミさん。結果的に逃げてるわけだしさ」


海軍に追われて気が逸っていたとはいえ、不覚にも少女の存在を忘れてしまっていたナミは、ウソップとともに落胆した。
そんなナミを宥めながら、サンジは苦笑を浮かべる。


「……? おい、どうした」


不意に、ゾロが、自分の肩に乗っている少女に向かって言った。
ゾロの肩の上にも慣れ始めたらしい少女は、最早抵抗することもなく収まっていたが、突然辺りをキョロキョロと見渡し始めたのだ。


「―――……!」


少女はしばらく辺りを見渡した後、ゾロに向かって一つ苦笑する。


「皆さん、ちょっと止まって下さい!」


すると、少女は突然叫んで一行を止めた。
立ち止まった一行を見て、少女はゾロに自分を下すように頼み、地に足をつける。


「何だ? もう逃げねェのか?」


ルフィがそう訊ねるが早いか、少女が地面に膝をついて何かを探し始めた。
何か落としたのだろうかと一行が見守っていると、遠くから多数の足音が近づいてきているのが分かる。


「おかしいなぁ……この辺りのはずなんだけど…」
「お、おい、何探してんだ? 早く逃げねェと海軍の奴らが来ちまうぜ」


ブツブツと何かを独り言のように呟きながら地面を探る少女に、ウソップは背後を忙しなく振り返りながら言った。


「……―――!」


海軍の無数の足音が徐々に近付いてきている中、不意に少女の動きが止まる。

そちらに目を向けると、丁度地面にある何かが開く音が路地に響いた。


「「「「「!!?」」」」」


その不可思議な音に目を凝らすと、そこには何故かぽっかりと地面に空いた穴。
1人が余裕で通れるくらいの大きさに広がったその穴には、分厚い扉が付いていて。
その、地面に空いた不思議な穴から飛び出してきたのは―――。


「ッ、姉ちゃん!! よかった、無事だったんだね!」
「遅ェよ、! 心配掛けやがって……早く入れ!」


温厚そうな口調の、123歳前後の歳だと思われる蒼い髪の少年と、目つきの鋭い、橙色に近い赤髪を持った156歳ほどの少年の顔。
性格や雰囲気は違えど、多少顔つきが2人とも似ていることから、おそらく兄弟か何かだろう。

少年2人は安堵したように声を上げていると、少女に穴へ入るように促した。


「ごめん、2人とも。色々と予定が狂っちゃって…」
「いーから早く入れって!」


少女は少年達に困ったように笑ってみせると、少年が引っ込んでいったのを見計らって、クルリと、後ろにいる一行に振り返った。


「皆さんもどうぞ」
「すっげー! 地面に住んでんのか、お前!」


少女がそう言って一行を穴へ促すと、好奇心の塊であるルフィが真っ先に穴の中へと飛び込んで行った。


「どうぞったって……こんなとこ、入って大丈夫なのかよ」
「大丈夫ですよ。森まで抜けるより、ここに入った方が安全だし。……中に入れば分かります」


よく不審がりもせずに飛び込めるものだ、と警戒心の欠片もないルフィに呆れながらも、背後から聞こえる足音に気付き、他のクルー達も順々に穴へと飛び込んで行った。
最後に少女が穴へ飛び込むと、ゆっくりと分厚い扉が閉まっていく。


「「「おおぉぉぉぉッ!!」」」


穴の中は、広々とした空洞になっていた。
通路のように整えられた穴の中を見渡し、ルフィ・ウソップ・チョッパーの3人は、今までにないほど瞳を輝かせて感嘆の声を上げる。


「何だ、ここは…」
「地下通路、みたいね。人の手で造られてる」


その何とも言えない不思議な空間に違和感を覚えたゾロは、怪訝そうに辺りを見渡す。
ロビンは1人、くの壁に触れて言った。


「結構奥まで続いてんな…」
「まさか……街の下全部に通ってるんじゃないでしょうね?」


サンジが奥の方まで続く空洞を見つめて言うと、ナミが怖々しながら天井を見上げた。
おそらく、崩れてこないかどうか心配しているのだろう。

奥の奥まで続く通路に、所々点灯する灯り。
よく見ると、部屋があるのか、扉が取り付けられた壁がある。
―――明らかに、人が何らかの目的で造り上げたものだ。

一行が驚愕している間に海軍の足音が去ったのを確認した少女は、改めて一行を振り返って言った。


「二度も助けてもらっちゃって……本当にありがとう。ごめんなさい。おかしなことに巻き込んじゃって…」


少女が申し訳なさそうにそう言うのを、一行は黙って見ていた。


「それに……皆さん、この島の住人じゃないみたいだし…」
「全くよ! 島に着いた途端こんなことになるなんて思わなかったわ」


少し顔を俯かせて言う少女に、ナミが溜め息交じりに言った。
しかし、すぐに苦笑を浮かべて続ける。


「―――と、言いたいところだけど。アンタにも何か事情があるみたいだし…結果的には私達も助かったわけだし、気にしないで!」
「!」
「それに、誰もアンタのせいだなんてこれっぽっちも思ってないから、謝らなくていいわよ」

ナミの言葉に呆気にとられた少女は、顔を上げて目を丸くした。
すると、そんな少女の目の前に、落ち着きなく辺りをチョロチョロしていたルフィ達3人が、ズイッと顔を出す。


「お前すげーとこ住んでんだな! どーなってんだ、ここ?」
「……へ」
「お、おれ、こんなカッコイイとこ来たの初めてだっ!」
「う……?」
「これ、さっきの奴らとお前が作ったのか?」
「……あー、えっと…」


ルフィ・チョッパー・ウソップの順で質問攻めしてきた3人に、少女はただ声を漏らすことしかできずに、困ったように笑った。
そんな3人を見かねて、すかさずサンジが仲裁に入る。


「ったく、お前らそんな捲くし立てんじゃねぇよ。レディーが御困りだ」
「そうね。そんなにたくさん質問されても困らせるだけだわ。ね?」
「……まあ、気持ちは分らなくもねェけどな」


ゆっくりと辺りを見渡したゾロの視線は、自然と少女へと向けられた。
少女は苦笑したまま、一行に向かって言う。


「ここは海軍から逃げるために、さっきの子達と5年以上かけて造った秘密の地下通路です。島の到る所に“玄関”を作って、地下通路を通るだけで島を移動できるように」
「じゃあ、やっぱり島の下全体に広がってるの!?」
「軽く要塞の域だな…」


その言葉に心底驚いた様子の一行に、少女は肩をすくめて見せると、クルリと踵を返した。
そして、一行に向かって言う。


「とりあえず、場所を変えます。ここで立ち話もなんだし……―――こっち。ついて来て下さい」


歩き出した少女の足音が、地下通路の密閉した空間に響いた。








この、言い知れぬ衝動。

(謎の少女は地下生活)









アトガキ。


*ようやく会話ができた、麦わら一味とヒロイン。そして、何かと活躍したゾロさん。

*主人公達の地下暮らしは、随分前から考えていたネタだったんですが…。
 ワンピ映画の『オマツリ男爵〜』で、同じようなネタが出てきてビックリ(爆)
 変えようかどうしようか悩んだ結果、続行しました。……映画の話書くときどーすっかな。

 まあ、とにかく。
 次回は自己紹介!




*2010/01/05 加筆修正・再UP。