日常急カーブ! 02
緑色の中に白く縁取られた、テニスコート。
その中心に張られたネット。
「……」
そこを行き交う、黄色く小さなボール。
あの小さなボールを全力で追いかけ、相手の不意を突く為に打ち返す。
そのボールが相手側のコートに叩きこまれ、自分の元に返ってくることなくコートの上を転がる瞬間は、テニスの試合経験者なら誰しもが高鳴りを感じる瞬間だろう。
視界を右往左往と飛び交う幾多もの黄色いボールを視線で追いかけながら、私は男子テニス部の練習をベンチに座って見届けていた。
マネージャーになるか否かの決心を固める為に練習風景を見ることになった私だが、正直、自分と同世代の人間の“真剣なテニス”を見るのは、久しぶりだった。
「あ、見たことある顔」
ふと、何となくボーッと見ていたコートの中に、学校指定のジャージを身につけた、最早見慣れた2人組を見つける。
レギュラー以外は学校指定のジャージを着ているので、レギュラー以外は全員青いジャージなのだが、クラスで見たその2人組の姿に、少し驚いた。
「確か……荒井君と、池田君」
2年8組になってそんなに日は経っていないし、人の顔と名前を覚えるのがそこまで得意ではない私でも、その2人のことは知っていた。
クラスでも結構目立っている荒井君と、そんな彼にいつもくっついている池田君だ。
嫌でも目に入るほど(というと失礼かもしれないが)悪目立ちしている2人で、友人の美都がよく「どうしようもない奴らだ」と愚痴を零していたことを思い出す。
「……あの2人も、テニス部だったのか」
レギュラーほどではないにしろ、懸命にボールを追いかけるその姿には好感が持てる。
クラスではちょっとした悪というかチンピラみたいな存在なので、私はその違いに少し笑った。
そして、その少し横へ目を向けると、先程お世話になった桃君と薫ちゃんが互いに胸倉を掴み合いながら怒鳴っている。
……テニスしないで喧嘩してるよ、あの2人。
何となく感じてはいたが、桃君と薫ちゃんは壮絶に仲が悪い―――と言うか、ライバル同士な関係らしい。
「あ、先輩達も打ってる…」
ふと、先程話をした手塚先輩と大石先輩を見つける。
大石先輩は、外撥ねの髪を揺らしながら飛び回っている人(その人もレギュラーのようだ)と共にダブルスをしている。
コンビネーションも打ち込みも絶妙で、きっとあの2人が青学テニス部のメインダブルスなのだろう。
手塚先輩はというと、これまた別のレギュラーの人とラリーをしていた。
先程まで私の隣で一緒に部員達の練習を眺めていたのだが、私が「1人でも大丈夫ですよ」と告げると、一言謝罪して練習へ混じっていったのだ。
もう少ししたら竜崎先生が来るらしいので、「それまではここで大人しく見ているように」とも言われてしまったが。
やはり、見ているだけではなくて自分も打ちたかったらしい。
「……上手いなー…」
手塚先輩と、色素の薄いサラサラな髪で女の人のように綺麗な顔をした人のラリーは、互いに的確な場所へ打ち込んでいく、隙のないラリー。
ジーッとそれに見惚れていたら、何だか胸の奥が疼いているような錯覚がした。
「……ん?」
そんな時、不意に、足元へ転がっている黄色のフェルトに包まれたテニスボールに気付く。
先程までは確かその場所にはなかったはずなので、今どこからか転がって来たようだ。
私は無意識にそのテニスボールへ手を伸ばし、それを手に取った。
触ってみた限り、結構使い込まれているボールだ。
「―――アンタ、誰?」
そんな時。
指先でテニスボールを撫でていると、頭の上に影が射して、少し訝しげな、不機嫌そうな声が降って来た。
その声にゆっくりと顔を上げると、そこには。
「……ねえ、聞いてる?」
白いキャップ帽を目深に被った、猫目の少年が立っていた。
本人には悪いが、明らかに私より年下だろう。
いや、彼の身長が小さいからという理由で決めつけているわけでは、決してない。
ただ何となく、だ。
私も人のことが言えないし。
今ここで立ち上がったら、きっと彼とそんなに変わらない身長のはずだ(全然伸びてくれないんだよ)。
そんなことはどうでもいいとして。
私の年下ということは1年生ということになるのだろうが、先程の先輩達のようにレギュラーを示すジャージを身に付けていた。
余程のテニスの実力者なのだろう。
それにしても……随分な喧嘩腰だなー。
ボーッとそんなことを思いながら、少年を見上げて小さく首を傾げる。
すると、彼は少し不快そうに顔を歪めて、溜め息をついた。
「『アンタ誰』って、聞いたんだけど。それに…」
そのボール。
と、私の手元を指差しながら言う少年。
どうやら私が手にしているボールを取りに来たついでに、見慣れない人間の姿を見つけて戸惑っている模様。
とりあえず、私は手に持っていたテニスボールを少年に差し出した。
一瞬、呆気に取られたように大きな猫目が更に大きく開かれたが、すぐにムスッとした顔に戻って、私の手から雑な動作でテニスボールを奪っていく。
「ごめんね。すぐ返さなくて」
「別に……―――で、アンタ誰なわけ?」
ボールを渡したにもかかわらず、まだ私の目の前に仁王立ちしている少年。
私は謝らなければならないのかと考えて軽く謝罪の言葉を零したのだが、少年はそれを素っ気なく返すと、本日3度目の疑問を投げかけてきた。
ああ、名前が聞きたかったのか…。
「2年の」
「……ふーん」
……自分から訊いといて、その反応はないんじゃないだろうか(失敬だな)。
名乗った私に対して、これまた素っ気なく返してくる少年に若干戸惑ったが、そこは性格上気にしないでおくことにした。
少年は暫くジーッとこちらを見つめていたかと思うと、まだ訊きたいことがあるのか、更に口を開く。
「その先輩が、こんなとこで何してんの? 堂々とベンチ座って」
「……」
頼むから練習に戻ってくれ、とは流石に言えなかった。
何故、と言われれば「マネージャー候補だからです」としか答えられないのだが、まだ私がマネージャーになると決定したわけでもないので、少々返答に困る。
どう返していいか分からずに俯いている私に、少年の視線が突き刺さる。
「越前」
すると、まるで私の困惑した空気でも読み取ったかのような絶妙なタイミングで、少年とはまた別の声が割り込むように入って来た。
おそらく少年の名字だろうその単語に、私はその声の人物を見る。
そこには、先程手塚先輩とラリーをしていた、綺麗な顔の人が立っていた。
「不二先輩…」
「彼女は手塚が連れてきたんだよ。テニス部の見学者さ」
「……手塚部長が?」
綺麗な笑みを携えたままこちらに向かってゆっくりと歩み寄ってくるその人は、『不二先輩』というらしい。
そんな先輩の言葉に「厳密に言えば連れてきたのは、貞治君に頼まれた桃君です」と、心の中で返す。
それにしても……近くで見ると、ますます女の人みたいだ。
「なんでも、乾と竜崎先生ご推薦の子らしいよ?」
「ご推薦って……何の推薦ッスか」
ここに来てからずっと、怪訝そうな顔付きを続けている少年―――越前君。
そんな越前君を横目に、不二先輩とやらはニッコリと微笑んだまま、「さあ?」と小さく首を傾げて見せた。
そして、2人の視線は必然的に、私の方へと向けられる。
「ごめんね、うちの1年が。僕は不二周助、3年だよ。彼は越前リョーマ」
「え、あ……2年の 、です」
「さん、ね。よろしく」
先程からの私と越前君のやり取りを見ていたのだろうか。
不二先輩はベンチに座っている私と目線を合わせるように腰を屈めて、自分のみならず越前君の紹介までしてくれた。
「そういえば、越前君から自己紹介されてなかったな」とか「リョーマっていうのか……カッコイイ名前」とか、そんな下らないことを考えながらも、私は慌てて不二先輩に向かって頭を下げる。
近くで見ると、本当に綺麗な人だ。
男の人に『綺麗』という形容を遣うのもどうかとは思うが、素直にそう思った。
「……」
不二先輩が頭を下げた私を見降ろしていたので、ちょっとした愛想笑いを浮かべると、彼は細い目を少し開いた。
スッ、と静かに開かれた瞼の先には、澄んだ色の瞳。
ああ、“美形”ってこういう人に使うんだな…。
そんな下らないことを考えながら、黙ったままジーッと見つめてくる不二先輩の目を不思議に思いながら首を傾げて見つめ返していると、いつの間にか近くに立っていた手塚先輩に肩を叩かれた。
「! ……手塚先輩」
「、すまなかったな。1人で見学させてしまって…」
「いえ……手塚先輩も練習に参加したいでしょうから。それに、私はそろそろ―――」
帰ります。
そう言おうとした私の視界に、ある人物が映った。
ピンク色のジャージを身に纏った、恰幅の良いその姿。
手塚先輩が練習を中断して私に寄って来た理由が、何となく分かった。
「―――おー、! 早速見学してるようだね」
「……竜崎、先生」
テニスコートを囲うフェンスの出入り口から、私達の立っているベンチに向かって真っ直ぐに歩いてくるその姿。
青春学園男子テニス部顧問―――竜崎スミレ先生だった。
編入試験の時と編入初日以来、久々の再会だ。
私の目の前で足を止めた竜崎先生へ向かって小さく頭を下げると、それとほぼ同時に、コートのあらゆる所から「ちぃーッス!!」という挨拶が飛んでくる。
それに驚いて思わずビクリと肩を震わせると、それを見た竜崎先生はおかしそうに笑っていた。
「色々と、乾やアンタの保護者から話は聞いてるよ。よく来たねぇ、」
「……まだマネージャーになるとは決めてませんけどね」
「おや、そうなのかい? まあ、いいさね。どうせやることになるんだから」
「……」
何だか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが、そこはあえて無視しよう。
「相変わらずだねー」と豪快に笑いながら、私の頭をバシバシと上から叩きつけてくる竜崎先生(縮む…!)。
あまりの衝撃に軽くふら付いた私の背を、誰かが身体で支えてくれたらしく、ポスッと情けない音が背後からした。
「あ……っ」
慌てて体勢を立て直し、その人物に謝ろうと後ろを振り返った私は、その人物の顔を確認した途端、謝罪の言葉を忘れる。
私より頭1つ分以上も高い、その身長。
今となっては忌々しいばかりの、幼馴染み・貞治君。
「遅かったですね、竜崎先生」
「すまないね。会議が思いの外長引いてね」
ジーッと自分を睨み上げている私を、何ともないように片腕でいなして、貞治君は続ける。
「残念ながら、彼女がマネージャー採用の件を即決出来なかったようなので、手塚の指示で決定は後日になりました」
「おや、そうかい」
貞治君に報告を受けた竜崎先生は、チラリと、私と手塚先輩を見やってから頷いた。
そんな2人を見て、状況について来ていない者が若干名いるのは、あえて気にしないことにする。
それにしても、竜崎先生がコートにやってきたことで、一気にこちらへの視線が集中してしまった。
しかもレギュラーと呼ばれる人達と顧問が、揃いも揃ってどこの馬の骨とも知れない小娘―――つまり私を取り囲むように話しているものだから、自然と注目は私に集まっているようにも感じる。
「誰だあれ」という視線の中に、「あっ、だ」という視線が混じっている気が、しなくもない。
「……部長」
そんな、私が1人肩身狭く縮こまっている中、少し困惑を秘めたような声が手塚先輩を呼ぶ。
手塚先輩はその声の主―――越前君にゆっくりと視線を向け、静かに「何だ」と返した。
「マネージャーって……まさかこの人のことッスか?」
「まだそうと決まったわけではない」
「ってことは、これからなる予定なんスね」
「……彼女が了承すればな」
『私のこと』というよりも『マネージャー採用のこと』は、まだ部員全員が知っているわけではないようだ。
まあ、「これからマネージャーが来る予定だ」と先に言って期待させておきながら「やはりマネージャーは来ないから、自分達でやれ」と言われては、部員も意気消沈してしまうだろうから、当たり前と言えば当たり前か。
越前君は手塚先輩の言葉に、納得したようなしていないような複雑な表情を浮かべて、ベンチの上で半ば硬直している私を見た。
そして、私でも思わず驚く一言を零す。
「こんな鈍臭そうでやる気も無さそうな人に、テニス部のマネージャーなんて出来るんスか?」
しん、と。
その場に怖いくらいの沈黙が走った。
私はその沈黙を感じ取りながら、一人目を丸くする。
生意気そうな子だな、とは思っていたのだが、まさか自分のことをここまではっきり辛辣に言われてしまうとは思ってもみなかったのだ。
そんな私に気付いていないのか、それとも気にかけていないのか。
彼はラケットで肩を軽く叩きながら続ける。
「それに、今までマネージャー取ってなかったんでしょ? なら別に、今更こんな人使わなくてもいいじゃん。素人っぽいし、その人。テニスのこと何も知らないんじゃない?」
そんなに頼りなさそうな顔付きをしているのだろうか、私は。
確かに、兄さんには「ボーッとしすぎて危なっかしいから気をつけろ」とは言われているし、昔から従兄に「お前は目を離すとすぐ面倒事になる」とか心配されてきたし。
友人の美都に至っては初対面にもかかわらず、第一声が「眠たいの?」だった。
自分自身、普段から大分気は抜けていると思っているが、こうして正面切って他人からハッキリと言われるのは久々かもしれない。
「越前、彼女に失礼だよ。……言い過ぎだ」
越前君の言葉に少し思考を巡らせている私に気付いてか、不二先輩が静かに越前君を嗜めた。
特に気分を害したわけではないのだが、不二先輩は越前君の代わりに「ごめんね」と私へ向かって謝ってくる。
……なんか、おかしな方向へ話が進んでしまっているような。
「越前、お前の気持ちは分からなくもない」
どうしたものか、と私が今にも唸りだそうとした時、不意に貞治君が口を開く。
その手には、いつも持参しているらしいノート。
「分からなくもないが……人を見かけで判断すると後悔することになる」
「……どう後悔するんスか」
一言余計な気がしなくもないが、貞治君なりに私をフォローしてくれているらしい。
私がハッとして顔を上げた先には、相変わらずの逆光眼鏡と、それを不機嫌そうに睨みつける大きな三白眼。
「彼女に常日頃からやる気があるのか、と訊かれれば答えづらいが……彼女は素人なんかじゃない」
手元の怪しげなノートをパラパラと開き、あるページでそれを止める。
「まさか、私のことが事細かに記してあるのでは…」という不安に駆られたものの、口を出す勇気が私にはなかった。
「俺と彼女―――は、同じテニススクールに通っていた馴染みだ」
「!」
「当時は俺と、そしてもう1人の幼馴染と3人で通っていたテニススクールで、俺は幼馴染とダブルス、は必然的にシングルスとして、大会に出場して、優勝した経験もある」
小学校時代の話を、こんな所で聞く羽目になるとは思ってもみなかった。
しかも、聞いているのは私だけではなく、かの青学テニス部レギュラーの面々。
よくよく辺りを確認してみると、何だかコート内がシンと静まり返っているような気がして、他の部員達も貞治君の言葉に耳を傾けているように感じる。
「……さんはテニス経験者―――それも、それなりの実力者、ってことだね、乾」
「ああ。……しかも、それだけじゃない」
貞治君の視線は、ずっと手元のノートに落ちている。
私は何だか恥ずかしくなってきて、その場で俯いた。
越前君達が拍子抜けした様子で立っている中、竜崎先生だけは愉快そうに笑って、私の隣へ腰掛けてくる。
「―――…が、それを証明するには自身の協力が必要なので、俺からは何とも言えない」
そう続けた貞治君に、辺りはただ静まり返っていた。
顔を俯かせている私に彼らの表情は読み取れないが、おそらく呆気に取られているのだろう。
そこまで言っておいて、何故隠す。
そんな皆の思考が、雰囲気から感じ取れた。
しかし、貞治君の言っていることも今となっては昔の話だ。
今テニスで実際に誰かと戦ってみても、勝てる確証はない。
何より―――私はテニスをやめてしまった身だ。
「……尤も、見ての通り現在はテニスから遠退いて生活をしているわけだが」
最後にそう締めくくって、貞治君がパタリとノートを閉じた音が聞こえた。
そして、そのノートで、パシリ、と軽く頭を叩かれて、私は思わず顔を上げる。
「身体を動かしていないとしても、のテニスに関する知識は確かなものだ。だらしがないように見えて意外と手先も器用だし、目聡いくらい気も利く。昔から知っている俺が言うのだから、間違いはない」
「……」
そう言って、昔のような優しい目で私を見下してきた貞治君を、私は心の中で見直していた。
今日1日、彼の勝手な行為によって最悪な気分で1日が終わっていくかと思われたのだが、気分は彼の一言で簡単に一転。
やはり、幼馴染みにそう言ってもらえるのは、嬉しかった。
「―――……」
「! は、はいっ」
手塚先輩に呼ばれた私は、慌てて身を正してその場に立ち上がった。
真っ直ぐに手塚先輩を見上げると、意志の強そうな切れ長の目とかち合う。
「よく、考えてみてくれ」
「……え?」
手塚先輩の口から零れた言葉に、私は思わず聞き返してしまった。
そんな私を見下したまま、手塚先輩の声は静かに続く。
「マネージャーの件だ。今日初めて逢った俺が言っても信用がないかもしれないが…」
私をジーッと見下して話す手塚先輩を、心なしか物珍しげに貞治君達が見ているような気がするのは、私の気のせいだろうか。
貞治君が何やら「興味深い…」と呟きながら、ノートにカリカリと熱心に書き込んでいる。
「……乾にそこまで言わせる人物を見るのは初めてだ。俺も―――にならマネージャーを任せてみてもいいかもしれないと、思った」
「!」
コホン、と1つ咳払いをして視線を反らしながら言う手塚先輩は、何だか今までの厳格な印象が若干和らいだ、どことなく年相応な人間に見えた。
私から逸らされた手塚先輩の視線の先に貞治君がいるのは、無視しておくとして(だって、何かすごい睨んでるし、手塚先輩)。
そんな手塚先輩に続くように、ふと不二先輩が、クスリと小さく笑って言う。
「手塚がそんなこと言うなんて珍しいなー。……でも、僕も手塚と同意見かな」
「不二先輩…」
「さんがマネージャーになってくれたら、何だか色々と面白そうだしね」
とてつもなく綺麗な笑顔でそう言われて、私は少し苦笑する。
そんな私を、未だ納得のいかないような表情で見ている越前君は、暫くその場で足を止めていたが、いつの間にか静かに1人、コートの方へと戻っていってしまっていた。
「……嫌われちゃったのかな」
「越前のことは気にする必要はない。おそらく、の“何か”を感じ取ったが故の行動だろう」
白い帽子を被った少年の後ろ姿を見つめて、何となしに呟く。
それに応えたのは貞治君で、私の頭にポンッ、と掌を置くと、慰めるかのように数回軽く叩いてくる。
「さて、。いい返事を待っとるからね、私は」
何で、私なんかをマネージャーにしたいのだろうか。
これだけ有名で、これだけ人気のあるテニス部ならば、他にも希望者はたくさんいるだろうに。
そんなことを頭の中では考えているものの、それが竜崎先生へ向かって私の口から零れ出ることはなかった。
自然と左手首に伸ばした右手の指先に、ブレスレットの冷たい感触が響いて。
チリン、と小さく鈴が鳴ったと同時に、私は左手を握り締めてハッキリと頷いて見せた。
この、内に広がる衝動は。
(各々の心の中に、確実に)
アトガキ。
*リョーマと不二との出逢いと、荒井と池田(名前のみ)の登場。そして、ほんの少しの過去。
*何だかリョーマが生意気通り越して嫌な奴ですが…まあ、これから仲良くなる……はず!!
不二の方は誰よりも早くヒロインのこと気に入ってもらおうと思ったので、ヒロインちゃんの愛想笑い(笑顔なのか?)を見てもらいました。
ウチのヒロインは、普段はボーッとした顔付きだけど笑うと可愛い、的な設定なので(笑)
とりあえず、まだ出会い編続きます! 次くらいでヒロインも決断する、かも?
*2010年5月25日 加筆修正再UP。
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